非行政書士行為とは
行政書士又は行政書士法人以外の者が、他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することは、行政書士法第19条により禁止されております。(※他の法律に別段の定めがある場合ほか、一定の例外を除く)
「非行政書士行為」とは、行政書士又は行政書士法人でない者(非行政書士)による、これらの営業行為を指します。非行政書士行為については「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」と行政書士法第21条に規定されています。
また行政書士法では、行政書士又は行政書士法人でない者が「行政書士」「行政書士法人」を使用すること、さらにこれらと紛らわしい名称を使用することも禁止されており、これに違反したものは「百万円以下の罰金に処する」と行政書士法第22条の4に規定されています。
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1.書類の作成について
行政書士だけができる業務(行政書士法第1条の2)の範囲として定められているのは、「他人の依頼を受け」+「報酬を得て」+「官公署へ提出する書類を作成すること」または「他人の依頼を受け」+「報酬を得て」+「権利・義務・事実証明書類(図面類)を作成する」ことです。
この場合の「作成」とは、白紙の状態から書類を完成させることはもちろん、部分的な加筆(申請日・住所番地・法人番号の記入等)・作図等も含まれます。
2.使者としての代行行為
行政書士法違反となる行為には、単なる「使者として行う申請の代行行為」は含まれていません。ですが、「作成~申請~受領」という過程の中に「書類の作成と認められる行為」が含まれているのであれば、「作成~申請~受領」という行為は手続きとして一体化していることになります。従って、「書類の作成は無料で行い、コンサル料や代行部分の費用(手数料)だけを受領した。」という主張は成立しません。
3.請求名目
測量図面を作成した測量会社やコンサル会社などが、「コンサル料はいただきますが、申請書は無料で作成します」などと言って作成を行う場合、実態としては申請書類の作成費用も測量報酬に含められていることがしばしばあります。前述のように、全体として一体(測量から申請まで)となって業務を行っていれば、行政書士法違反となり得ます。
4.電子申請(OSS)の場合
自動車販売協会連合会が行う自動車のOSS申請は、申請書に記載すべき事項をPCに入力し添付書類(所在図・配置図・自認書・承諾書)をスキャンして電子申請するだけなら問題ありませんが、その元となる紙ベースの書類に加筆・修正等の手を加えた上でスキャンした場合は書類の作成と見做されます。(OSS申請における行政書士法の適用除外は、法人としての自販連であり個々のディーラー(自動車販売店)には行政書士法の適用があります。)
5.対価(報酬・手数料・代行費用)とは
上記1~4の場合における対価とは、その名目が「報酬・手数料・代行費用等」であるかの如何を問わず、その実体がどうなのか、ということになります。
また、対価の額はその多寡を問わず、行為が1回だけであっても違反となります。
6.根拠となる法令等
(行政書士法、行政書士法施行規則)
(OSSの運用に関する細目 通達 警察庁丁規発第34号 令和2年3月23日)
(総務省・・警察庁照会ー旧自治省 行政局行政課長回答 昭和62年6月19日)
(補助金申請に関する総務省回答 令和4年2月16日)
なぜ行政書士にしかできないのか
許可申請書などを作成する場合、一見すると誰でも作成できるような印象を持つこともあるかもしれません。ですが許可の取得は100%を保証されたものではなく、様々な要件を満たしていることを多種多様な書面で示してはじめて許可されます。
過失や錯誤によって要件を満たしていないことを見落とし、不許可になった場合、非行政書士が賠償を恐れて逃げてしまうと、依頼者の損害を補填する手段はなくなってしまいます。一方、行政書士は、国家資格者として依頼者に対し損害賠償責任を負って業務を行っております。その損害賠償責任を全うするために、行政書士しか加入できない賠償責任保険も存在します。
誤解されがちですが、行政書士試験に合格するだけでは行政書士ではありませんし、行政書士業務もできません。行政書士が折々に受講する行政書士会の研修など研鑽の場にも、行政書士でない者は参加することができませんし、行政書士同士の情報交換もできません。そうなると、ちょっと要件が複雑な申請をするときに、途中で行き詰まってしまうことや不許可になることも少なくありません。
もちろん非行政書士は行政書士専用の賠償責任保険に加入することはできませんので、非行政書士に業務を依頼して多額の損害が生じたときでも、依頼者に対して損害賠償責任を全うすることができない可能性は極めて高いものとなります。
本来ならば取得できたはずの許可を取得できず、事業に重大な支障が生じたときでも、非行政書士が雲隠れしてしまったり、「こちらが受任したのはコンサル業務だ」などとごまかすばかりで誠意のある対応を行ってくれなかったりといった事例は数多くあります。実際には申請書類の作成を行っているにもかかわらず、請求書の名目を「コンサル料」「提出代行」などとしてしまうデメリットは、こういうトラブルではしばしば現れます。
また例えば、事業施設が消防法令に適合していないケースで、行政書士であれば最初に気付いて依頼者に是正していただいてから申請を行うケースでも、非行政書士が「ただ許可を取得できればいい」という考えで依頼者へ是正をお願いせず、書類上だけ法令に適合するような事実と異なる申請を行った結果、後日になって許可を取り消されるケースも発生します。そうなってくるともはや消費者被害と言っても過言ではありません。
このような非行政書士行為によって依頼者が不利益を被ることを予防すべく、北海道行政書士会十勝支部では情報収集および注意喚起に努めております。十勝管内において、行政書士ではない者が行政書士業務を行っている場面を見かけた際は、お電話またはお問い合わせフォームにて当支部までご連絡ください。
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相手方が行政書士であるか確認する方法
1.日本行政書士会連合会のホームページで確認する
日本行政書士会連合会のホームページには、全国すべての行政書士が掲載されています。また、十勝管内の行政書士においては当ホームページからも検索することができます。
行政書士会員検索|日本行政書士会連合会
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2.行政書士証票、事務所の表示を確認する
行政書士が職務を行うときは行政書士証票を常に携帯しています。依頼相手が「行政書士」と名乗っていても行政書士証票を提示しない場合、行政書士ではない可能性があります。
また、行政書士は事務所に「行政書士の事務所であることを明らかにした表札」を掲示しなければならないとされています。表札の掲示がない場合、行政書士事務所ではない可能性があります。
3.お近くの行政書士会に問い合わせる
行政書士会は都道府県ごとに置かれており、また各都道府県行政書士会には地域ごとに支部が置かれています。相手方が行政書士かどうか不明な場合はお近くの行政書士会に問い合わせて確認しましょう。
北海道行政書士会十勝支部は、十勝管内全域を管轄しています。相手方が行政書士か不明な場合、事務局にお問い合わせいただければ確認いたしますので、お気軽にお問い合わせください。